徳島ヴォルティスの強さの秘密を戦術的観点から探る(J2第22節名古屋グランパスvs徳島ヴォルティス)
【前置き】
ヴェルディvs名古屋の戦術的考察をした際に、論理的なフットボールを展開しているチームとして、ヴェルディの他にもう1チーム挙げたのを覚えていらっしゃいますでしょうか。
そうです。徳島ヴォルティスです。主にネット上で、スペイン人の新監督であるリカルドロドリゲス監督率いるチームのクオリティの高さを賞賛するエントリーをよく目にしますね。
確かに素晴らしいパフォーマンスを発揮しています。果たして、彼らは何に優れているのか。それを先日の名古屋グランパス戦から読み解くのが、今回の目的です。
試合を時系列で追いながら、徳島の戦術的キーポイントを押さえる流れで進めていきます。
キーワードは、「位置的優位性」「数的優位性」「非対称」「縦軸」
ポイントとなる戦術は「ビルドアップ」「切り替え」「プレッシング」
【0〜15分】
名古屋のスタメンです。攻撃時はワシントンアンカーで、和泉竜司と田口泰士が前後に顔を出しながら攻撃をクリエイトしていく4-1-2-3。
守備時はウイングの深堀隼平と八反田康平が1列下げった4-1-4-1で中盤センターを厚くします。
対して、徳島のスタメンです。
攻撃時も守備時も基本システムは4-3-1-2。
徳島は様々なシステムを使い分けるのが特徴ですが、ほとんどの試合で固定されているのが、岩尾憲のアンカー起用と、2トップシステムです。
その意図は後ほど考察したいと思います。
徳島の守備コンセプトは、「数的同数」プレッシングです。
目的は2つ。相手のビルドアップのリズムを崩してミスを誘う(あるいは、誘引したパスを奪う)ことと、敵陣でボールを回収し、効率的にフィニッシュまで持っていくためです。
そのために、徳島は2トップを常に採用しています。
相手が4バックチームで、CBの2人でビルドアップを開始する場合は、そのまま2トップがアプローチして、後ろの選手もそれに呼応します。
例えばそこにアンカーを落として3on2の局面を作ろうとしてきたチームには、トップ下の選手がアンカーにアプローチして、数的優位を作らせません。
それは3バックのチームに対しても同様です。相手のビルドアップのやり方に対して、プレッシングの仕組みは微修正しますが、基本的なコンセプトとしての数的同数プレッシングを保つために、基本的に徳島はどのようなチーム相手でも、2トップを採用します。
縦のコースを消しながら、ボールをサイドに流していき、インサイドハーフとSB(WB)で回収してカウンターというのが1つの戦略です。
それでは、序盤の名古屋のビルドアップに対する徳島の守備戦略を見ていきます。
局面は、左から右に攻める名古屋のビルドアップシーンです。
名古屋のビルドアップの基本コンセプトは、2人のCBからボール前進をスタートさせます。そこにアンカーのワシントンや、田口がサポートしながら、ボールを敵陣に運んでいきます。つまり、SBはあくまでも逃げ場で、理想は2人のCBと、2人のMF(計4人)でボールを敵陣まで運ぶことが理想と考えているチームです。
そのスカウティングを踏まえて、徳島は2トップをそのまま名古屋の2CBにぶつけ、アンカーにトップ下の島屋八徳をアプローチさせて、ボールをサイドに逃させます。
そこにボールサイドのインサイドハーフや、SBが詰めて回収します。
奪った後は、一番近くにいるMFの選手に横パスや横移動でボールを逃して、前線に残る2トップとトップ下にボールを付けて、効果的にカウンターを繰り出します。
この、守備から攻撃に切り替わる時のボールの運び方も、徳島の大きな特徴です。
なぜ、アンカーシステムを常に取るのかという部分で、後ほど触れたいと思います。
厳しい徳島のプレッシングを前に、ボールをなかなか前に進められない名古屋は、打開策として1つの回答を示します。それが3分。
中盤のプレス回避からフィニッシュまで。 pic.twitter.com/WaxsZ9RXfa
— りょー (@blog_hardworker) 2017年7月9日
最終ラインでボールを持った小林裕紀が、中盤を経由せず、良い動き出しを見せた深堀にフィード。それを胸で和泉に落とし、左足でアーリークロス。
永井龍が最終ラインを抜け出してワンタッチボレーを見せました。
パスセンスのある小林を最終ラインで起用するポジティブな効果が示したシーンでした。(シュートは枠外)
ただ、基本的には徳島のプレッシング戦略がはまり出しているかなー?という立ち上がり。
そして6分、CKをゲットした徳島は、岩尾のキックに井筒陸也が頭で合わせて先制点を取ることに成功します。
このCKにも徳島の名古屋対策が見て取れます。
マンツーマンで守る名古屋ですが、マークの確認や対応がルーズなところがあります。
湘南戦でも露呈したポイントなのですが、そこを徳島は突いてきました。
徳島のCK時の布陣は1-1-6-2です。キッカー、ニアサイド、ファーサイド、背後です。
6人の内訳と、それに対するマーキングは以下の通りでした。
大崎玲央ーワシントン
渡大生ー永井
山崎凌吾ー櫛引一紀
井筒ー小林
島屋八徳ー宮原和也
そして、キッカーが蹴る瞬間に、井筒が小林を振り切ってフリーになります。
と同時に、渡・山崎・島屋はニアサイドとファーにそれぞれ走り込んでマーカーを撹乱させます。(分かりづらいですが、一番手前の小林が振り切られてバランスを崩しています)
果たして、フリーになれた井筒がダイビングヘッドでプロ初ゴールをもぎ取ります。
マンツーマンを敷くチームに対する、オーソドックスな戦術の一つです。
ファーでレシーバーが固まって、同時に三方向に進んでカオスを作る。
しかもこれは、マーキングに難のあるチームに対してより有効です。
この辺りも、しっかり名古屋対策をしてきていることがうかがえました。
先制点を許した名古屋は10分に、風間監督が八反田に指示し、布陣を4-1-2-3から、4-4-2に変更します。
前線のターゲットを2枚にすることで、3分に見せたような形で、徳島のプレッシングを回避しつつ、ビルドアップの逃げ場であるサイドに人数をかけることで、しっかりボールを保持するためだと思われます。
ただ、徳島もハイボールには大崎と藤原がしっかり対応して、名古屋にリズムを作らせません。
【15分〜30分】
この時間帯で、徳島のプレーモデルが体現されたシーンがいくつか出てきます。
ポジショナルプレーとゲーゲンプレスです。
24分、位置的優位からのボール前進→ネガトラ pic.twitter.com/gZ1mQ5Segu
— りょー (@blog_hardworker) 2017年7月9日
右SBの馬渡和彰がかなり高い位置に張り、最終ラインの全体が右にスライドしていきます。
この時点で、徳島の右サイドでは、櫛引に対して2on1の数的優位をポジショニングによって作れています。
名古屋の前線からのプレスが組織的でないかつ強度が弱いため、そこまで足元の技術が高くない徳島のCB2人も、この場面では比較的余裕を持ってボールを持ち、数的優位ゾーンにボールを出します。
その馬渡にボールを付けると、名古屋の守備陣は一瞬対応を躊躇します。
櫛引は23番前川大河のインサイドアウトのフリーランをケアしないといけないので、それに引っ張られて馬渡にプレッシャーをかけられない。
本来であればサイドハーフの和泉が対応すべき選手ですが、彼は高い位置に残ったままなので、ボランチのワシントンが左に引っ張られます。
すると、そこのスペースにしっかり2トップの1人である17番山崎が顔を出してボールを受けます。本来は小林が付くべきなのですが、小林も23番前川のランニングに釣られてしまっています。この辺りにも、マークやゾーンの受け渡しに対する準備不足が見て取れますし、徳島が各々の役割を明確にすることによって、フリーの選手を局面局面で作ることに成功しています。そして全ての選手がそれぞれの役割を担えることも特徴です。ですから、徳島の中盤から前線にかけては、ローテーションが効くわけです。守る側からすると、誰を抑えておけばいいのか、混乱に陥りやすくなります。
その後ボールを一旦は失いますが、敵陣で人数をかけてネガティブトランジションに備えている徳島は、名古屋の迎撃を前向きで潰すことに成功します。
必ずアンカーの岩尾が、相手の危険なところを埋め、ボールを奪い返した際は、カウンターの経由地になったり、トランジションの際にもかなり効いている選手です。
徳島の最終ラインは名古屋の2トップに対して数的同数で対応しています。
これは、一般的にはリスキーなリスクマネジメントと考えられることが多いですが、後ろの人数を余らせるよりも、敵陣での強度の高いトランジションを展開するために、あえて勇気を持って前に人数を割いています。
これも岩尾のフィルター力やカバーリング力があってこそです。
カウンターに対するカウンターは、最も相手の組織が乱れている状態であるため、かなり効果的に攻撃を展開することができます。
(これはゲーゲンプレッシングとも言われているコンセプトです)
名古屋は人は足りているものの、完全に組織として崩壊させられ、あわや失点というシーンを招くことになります。
徳島は、相手の1st守備の人数と同数のCBを配置して、岩尾を1列前にアンカーとして置いて攻守においてフォローさせるという戦略を持っています。
つまり今日の前半の名古屋のように、2トップでプレッシングをしてくるチームには、2CB(つまり4バック)プラスアンカー。
1トップや3トップでプレッシングしてくるチームには、1CB(つまり3バック)or3CBプラスアンカーでそれを回避にかかるわけです。
相手の布陣や、プレッシングの仕組みに合わせて、最終ラインの構成や、求められる役割に応じて人選も変えてくるのが、リカルドロドリゲス監督の「相対性」を如実に示していますし、アンカーとして君臨する岩尾が外せない理由も、確かな技術と頭の良さに所以があるわけです。
下記に、徳島のポジショナルプレーのパターンを図式化しています。
全て、相手のプレッシングの仕方に応じて、布陣やボール循環の流れを微修正しています。
<相手の1st守備が1人の時>
(基本的には相手の1人に対し、徳島も1人+アンカーで数的優位確保)
<相手の1st守備が2人の時(前半の名古屋がこれにあたります)>
<相手の1st守備が3人の時>
(後ろを3バックにして、人数を揃える。)
【30分〜45分】
まず32分に徳島の優れたボール前進の仕組みが見られています。(上の図でいう2つ目、相手の1st守備が2人の場合の図とよく似た構造です。)
32分、縦軸を用いたビルドアップ pic.twitter.com/0sxVTMaRYu
— りょー (@blog_hardworker) 2017年7月9日
局面は右から左に攻める徳島。左SBに入った井筒がボールを持った瞬間の中盤のポジショニングを確認ください。
ピッチを縦に5分割し、それぞれのレーンに選手を配置して攻撃するコンセプトが今トレンドとなっています。
目的の1つとして、中央とサイドの間のレーン(ハーフスペース)を活用すること。そしてこのコンセプトは基本的には4バックのゾーンディフェンスのチーム相手に効果を発揮しやすい。
ハーフスペースは、中央の選手とサイドの選手の境目のスペースであり、管理が非常に難しい。
徳島はこの縦軸コンセプトを、ビルドアップにおいて昇華させ、効果的なボール前進を見せていました。
同じレーンに人を配置せず、それぞれのレーンに効率的に人を配置し、パスコースを確保するため、徳島は中盤の構成をダイヤモンド型にしています。
この型をボールを前進させながら、各々がローテーションしながら全体として前に進めていくわけです。
ですので、このシーンの場合、アンカーの岩尾という逃げ場も確保し、更に、トップの渡が左サイドに落ちてきたことで、縦にもコースを作り、更に、ハーフスペースを開けて、そこに一筋の最も効果的なパスコースを作ることに成功しています。
そのパスを受けたトップの山崎がワンタッチでトップ下の島屋に落とします。
ここでも、型とボールが一緒に動いているので、パスコースが複数確保されています。
この後ボールを失いかけますが、ダイヤモンド型に人が確保されているので、ネガティブトランジションがかけやすく、すぐにボールを奪取します。
つまり徳島は、相手のシステムやプレッシングの仕組みを鑑みた位置的優位性を確保し続けることで、システム上のズレを各所に作って、そこを突破口にしていっています。
このように、ズレた場所に人を配置する位置的優位性、相手に対して人数を確保する数的優位性、全体を非対称にすることで、馬渡の単騎突破をオプションとして保持できる質的優位性。これらの優位性を備えたポジショナルプレーを展開できているところが、徳島の強さの秘密の一つと言えます。
そして、全ての選手がローテーションしながら、埋めるべきポジション、進むべきポジション、使うべきポジションを活用できています。それこそがポジショナルプレーです。
この状況にしびれを切らした風間監督は、プロ初スタメンの高卒ルーキー深堀に見切りをつけ、33分に杉森考起を投入します。
彼の良さは、ボールを引き出すためのアクションの豊富さと、量。そして狭い局面での確かな技術力です。
その良さが出たシーンがありました。
37分、考起の良さが出たシーン pic.twitter.com/Wj6KBrn7H9
— りょー (@blog_hardworker) 2017年7月9日
相手からフリーになってボールを嫌なエリアで受け前を向き、八反田とのパスワークでアタッキングエリアに侵入していきます。そして結果PKを獲得します。
こうした相手を外す動きを含めたボールの受け方と、その後のプレー精度が格段に向上してきています。これは風間監督の指導の賜物でもありますし、彼の潜在能力でもあります。深堀も学ぶところが多いのではないでしょうか。
このPKを決めきれていれば、少し流れも変わった気はするのですが、結果的には長谷川徹にストップされてしまいます。
杉森の投入で少しリズムを取り戻しかけたように見えた名古屋でしたが、PK失敗も含め、簡単なパスミスが連発し、自分たちでペースを持ってくることができませんでした。
一つだけ名古屋の守備の脆さを指摘します。
35分の前川の決定機です。
35分、前川の抜け出し pic.twitter.com/ArRbTO2aDm
— りょー (@blog_hardworker) 2017年7月9日
名古屋の442のゾーンが適切に敷かれていないことは一目瞭然です。
最終ラインからトップの選手に矢印で示したパスコースを一発で通されます。
ちょっと考えづらいです。
これも徳島は少し工夫していて。トップ下の島屋が左サイドの高い位置にポジショニングしています。名古屋のボランチからすると、本来マークすべき選手がいないので、中央にはいるものの、無力化されています。
その後、左サイドの島屋にボールを付け、斜めのボールをバイタルエリアに入れます。
磯村は山崎の、小林は渡のマークで中に引っ張られ、前川の2列目からの飛び出しについていけないボランチ。最後は左SB櫛引の絞りと楢崎正剛の好セーブでしのぐかたちになります。
前回のブログでも、名古屋の守備には基本コンセプトがないため、ゾーンと人、それぞれがそれぞれの事情で対応する結果、簡単にスペースを作られやすいと指摘しました。
このシーンでもCB間が相当空いてます。使われなかったですが、潜在的な欠点は修正されていません。
そんなこんなで前半が終了しました。
最もチームのコンセプトが出る前半に多くのリソースを割き、分析してみました。
後半は暑さから来る疲れや、その場その場での戦術的対応がメインになるため、ゲーム分析では重要な45分ですが、今回の目的は徳島のプレーモデル・戦術分析なので、後半は少しエッセンスを絞ってみてみます。
【45分〜60分】
後半開始から、徳島は下の図のようにシステム変更をしてきました。(前川と杉本太郎は頻繁にポジションを変えます。どちらがはっきり右、左っていう決まりは無さそうです)
後ろの人数を3枚に変えました。意図として、名古屋は守備時に杉森が右サイドに落ちることが多く、4-1-4-1の形で1st守備が永井の単騎になることが多いため、ビルドアップ要員として2人CBを置く必要が無くなったためだと考えられます。
つまり、ビルドアップの始まりは上の図の1枚目のような格好になり、大崎と岩尾で運ぶ形に変えました。
馬渡を得意の左サイドに持っていくことによって、杉森投入により、名古屋の活性化しつつあった右サイドを封じる意図もあったと思います。
開始早々、右で作って、左で張ってる馬渡に渡してカットインからのシュートというシーンが見られました。
47分馬渡 pic.twitter.com/YX9tOHfnCG
— りょー (@blog_hardworker) 2017年7月9日
48分、長谷川のビッグセーブ
49分、CKから決定機も、ポストに阻まれる
55分、2トップが高い位置でボールを収めて起点を作り、高い位置で張る馬渡へ。縦に切り込んでGKと最終ラインの間に速く低いセンタリング。
楢崎が一旦は弾くも、こぼれ球を杉本が押し込んで徳島が待望の追加点を得ます。
名古屋相手には、どのチームも、サイド深くえぐってのマイナスのセンタリングを仕掛けるチームが多いです。
ボールウォッチャーになることが多いのと、楢崎の守備範囲を考慮してのものだと思われます。
57分に、和泉に変えてシモビッチを投入します。永井が左のサイドハーフに移動。布陣は4141のままです。
【60分〜75分】
3バック+岩尾での優れたビルドアップからアタッキングサードを狙ったシーンが60分でした。
60分、徳島の3トップ+岩尾のビルドアップ pic.twitter.com/I8ToxRAyjp
— りょー (@blog_hardworker) 2017年7月9日
名古屋の3人でのプレッシングを数的同数のCB+岩尾で否しながら、縦軸を用いたサイドでのパス交換でディフェンスラインの裏を突きました。布陣は異なれど、プレーモデルが同じなので、相手に合わせて再現性のある崩しを披露することができます。
66分には前川に代えてカルリーニョス。
名古屋も永井に代えて佐藤寿人を投入。
徳島は攻撃時は3-1-4-2のままですが、守備時は中盤の中央が3枚並んでフィルターをかけ、両WBが最終ラインまで落ちた5-3-2のシステムで名古屋の攻撃に対応する形に変えました。
対する名古屋は、佐藤とシモビッチの2トップに変更し、全体も4-4-2に戻しています。
ただ、攻撃時はサイドハーフの杉森と八反田がかなり中に入って、2トップに近い位置でプレーすることが多いです。
72分、杉本に代わって19番内田裕斗が入り、これをメッセージに徳島は守備の布陣を少し変えます。
2点リード、かつ相手の4人の攻撃陣(特に杉森)の脅威に対して、リカルドロドリゲス監督は、リスクを負うよりも、リスクをかけない戦略に変更します。
具体的には、1ボランチシステムをカルリーニョスと岩尾を並べた2ボランチにして、相手の4人の攻撃陣に対してしっかりと1枚余らせて対応させます。
その裏を、突破力のある馬渡と、フレッシュな内田で突いてカウンターを狙うという戦略です。
74分、セットプレーから櫛引のヘッドは今日2本目のポスト。
【75分〜90分】
徳島のシステム変更によって、恩恵を受けた人物がいます。
田口泰士です。
それまでは数的同数プレスによって自由をあまり与えられなかったのですが、田口とワシントンには島屋が1人で見る形に変わったため、中盤で余裕を持ってボールを持つシーンが増えてきました。
76分には自らがかけ上げってボレーを放つシーンも見られます。このゲームで最も良い流れだった時間帯と言っても過言ではないです。
それほど今の名古屋は田口泰士のゲームメイク力に依存しているわけです。
リカルドロドリゲス監督は、2点差で残り15分という状況と、杉森考起の脅威を考えた時に、後ろの人数を確保する代わりに、田口を自由にすることを選んだと言えます。
名古屋は確実に息を吹き返してきていたのですが、最後のところで呼吸が合わなかったり、技術的なミスが起きて、なかなか決定機を作るまでには至りません。
八反田はかなり疲労しているように見えました。ボールが足につかない場面も。
リカルドロドリゲス監督は、最後のカードとして渡に代えて木村祐志を投入します。
疲労が見える島屋の分も走って中盤のサポートをさせます。田口が自由になりつつあっただけに、そこも抑えて欲しいという狙いがあったと思います。
82分、長谷川の3回目のビッグセーブ
そして試合はそのまま0-2で終わりました。
【総括】
長谷川の数多のビッグセーブが無ければというゲームでもありましたが、結果をたらればで語るのが今回の目的ではありません。
徳島の強さの秘密が少しでも垣間見ることができたなら本望です。
本日は、下記のような特徴を中心に検証してきました。
・2トップシステム設定の意味(攻守において、トランジションで優位に立つため)
・アンカー岩尾の速攻遅攻、攻守トランジション時における戦術的重要性
・ポジショナルプレーをコンセプトにした、相手のプレッシングを無効化し、全体でボールを運んでいくための中盤ダイヤモンド
・馬渡を用いた非対称や、最終ラインのビルドアップの仕組みや布陣など、それぞれの戦術が、相対性を持って実装されていること
これらをわずか数ヶ月のうちに、結果を伴って仕込んできたリカルドロドリゲス監督、論理的な発想のみならず、それをピッチ上で体現させる指導力や、そもそもの相手チームの分析力、そしてモチベーターとしての推進力、全てが高次元で噛み合っています。まさに名将です。
長くなりましたが、後半戦の徳島の戦いにも要注目ですね。