【緊急検証】ガブリエル・シャビエル対策方法

【前置き】

救世主として彗星の如く現れた名古屋グランパスの新外国人、ガブリエル・シャビエル。(期限付き移籍での加入)

加入後初戦となった7月22日のアウェイ京都戦でいきなりのゴールを決めると、9月28日現在で、11試合出場し、3ゴール11アシストと驚異的な活躍を見せており、現在Jリーグ界隈を騒がせている選手です。

早くも名古屋サポーターからは、来シーズンの残留に向けトヨタマネーを要求するような声もあがって来ているくらいです。

 

彼の特徴は、利き足である左足を存分に使った類まれなボールテクニックとキック精度(長短問わず)、そして一瞬のスピードを持ち、90分間運動量が落ちない。

攻撃の選手として必要な要素を全て兼ね揃えています。

一体、どうやったら彼を機能させず、名古屋に対峙することができるのか。対戦チームのスカウティング担当は頭を悩ませていることと思います。

 

そこで、今回は個人的な興味もあり、「ガブリエル・シャビエル対策方法」と題して、彼をどのように捉えて、対策をしていけばいいのかを検証してみました。

検証対象は、第31節vs水戸から、第34節vs東京Vまでの4試合としました。(理由は、単純にDAZNに残っている試合がこの4試合だったからです)

 

彼がどういう時に、どのような状況下で真価を発揮できているのか。そしてその逆もチェックしてみます。

分析内でも言及しますが、ポイントとしては、相手チームにとって「シャビエル対策」はそのまま「対名古屋対策」に直結します。

今の名古屋グランパスの効果的な攻撃は、シャビエルを経由して生まれるプレーがほとんどだからです。(客観的なデータとしても証明されています)

ですので、対シャビエル対策を検証することは、同時に対名古屋対策にも繋げてみることができるというわけです。

 

keyword:ハーフスペース プレーエリア セットプレー カウンター

 

【第31節vs水戸(A)】

この試合、水戸は画像のように、442の布陣を敷いて来ました。対する名古屋は3421。シャビエルは右のシャドーポジションに入っています。

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結論から申し上げると、この日水戸はシャビエルを抑え込むことに「ほぼ」成功しました。

まず水戸がチーム全体で取り組んだ守備戦術を動画で紹介します。

動画のように、名古屋はボランチ小林裕紀もしくは和泉竜司が最終ラインまで落ちたり、サポートに入りながら3バックと合わせて4人、あるいは5人でビルドアップします。4人の時は、両サイドのCBである宮原和也やイム・スンギョムが高い位置に上がりる、もしくはボランチのどちらか一方はポジションを落とさず、ビルドアップに関与しない場面に限られます。

GKを含めたプレッシングを回避する戦術は基本的には取らないのが特徴です。

水戸の最前線にいる2トップのアプローチを合図に、2列目の4人が呼応して全体でプレッシングを掛けていき、ボールをサイドに追い込みます。

名古屋がサイドチェンジした場合は、即座にボールサイドにスライドし、またサイドに追い込んでいきます。

もう一つ、動画をご覧いただきます。

 

このシーンでは、水戸の右サイドハーフ、10番の佐藤和弘に注目してください。

ボールが左CBのイムに渡った時の、佐藤の確認作業です。

周辺を首を振って確認し、自分とボランチの間のスペース(ここをハーフスペースと呼びます)に相手選手がいるかどうか、いた場合はその選手へのパスコースを消せるポジションをまず取ります。

その上で、ボールをサイドに追いやり、そこで初めて佐藤もサイドにプレッシャーをかけていきます。

いわゆる、「インサイドアウト」な守備の仕方です。

 

442で作る人海を縦横コンパクトに保ちながら、ハーフスペースをまず消して、ボールを外に追いやって回収し、スピードのある2トップを使ったシンプルなカウンターを発動させる。これが水戸の基本戦略です。

このチームとしての名古屋対策は、そのままシャビエル対策にも繋がります。

彼が真価を発揮するのは、まさにハーフスペースだからです。

この動画のように、ハーフスペースにポジションをさりげなく取って、一瞬のスピードでスペースを突き、圧倒的なボールテクニックとキック精度で決定機を演出するのが定番な形だからです。

どれだけボールを外に追いやって、シャビエルに危険な位置でボールを渡さないかが鍵になります。

この動画のシーンは、名古屋がうまく水戸のプレッシングを掻い潜ってペナルティエリアの横のスペースを突くことができました。

このようなシーンが対名古屋戦では増えて来ます。ここを凌ぐか、掻い潜るかでゲームの様相が大きく変わってくるのが、シャビエルを中心に据えた対名古屋戦の特徴になります。

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それではシャビエル個人に対する対策はどうでしょうか。

まずは、自分たちにとって危険なエリア、すなわちバイタルエリアやハーフスペースでボールを持たせないことが最優先になります。

なので、自分たちが敷くブロックの外で持たれる分には構わないという形になります。

シャビエルがボールを持ったら、一人かわされても必ずもう一人がついていき、背中を取られないようにカバーをします。

結果、危険なエリアへの侵入を防ぎ、攻撃を遅らせます。

次の動画のような、ボールの持たせ方が理想的です。

ちなみにこの動画でも、サイドハーフインサイドアウトの守備の仕方をしているのに気づきましたでしょうか。

 

こうした形で個人ではなく、組織的にシャビエルを抑えていくことは、名古屋そのものに対する対策になるのです。

何故ならば、今の名古屋の攻撃設計はシャビエルを経由するように定められているからです。

 

それでもスーパーマンは個人で打開できちゃうから怖いのです。

 

最初は2トップの片方もサポートに入りながら、しっかりとシャビエルをエリア外に追いやることに成功していますが、こぼれ球の流れからペナルティエリアの横のスペースに侵入し、得意のトリックプレーで局面を打開して来ます。

これはもう止めることは難しいです。

このボールキープからの展開もそうです。エリア外に押しやっても、こうして個人能力を武器に、ボールを相手が嫌がるスペースに運ぶことができてしまうのがシャビエルの怖いところなのです。

 

また、注意しておかないといけないのは、自分たちが名古屋に対してボールを保持して攻めている時です。

名古屋の守備組織は、3421のチームにありがちな、541の3ラインは引きません。

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手前の白い選手がシャビエルですが、こうした風に、1トップの選手と一緒に前線に残っていることが多いのです。

そして、前線に残っているシャビエルを中心にしたカウンターもこのチームの新たな武器となっているのです。

水戸は常に左SBの佐藤祥が攻撃中もシャビエルをケアできるポジションを取っていたのが印象的でした。

対シャビエル対策として、前残りしているシャビエル中心のカウンターも頭に入れておかないといけません。

 

先ほどのハーフスペースへの侵入も含めて、「シャビエルが本来のポジションにいない時」、それは魔法が起きる時かもしれません。相手チームは常に彼のポジショニングを気にしておく必要があります。

 

そして、何よりも怖いのが、彼のplace-kickです。

この日の同点ゴールも、シャビエルのCKにシモビッチが頭で合わせてのものでした。

 

危険な位置でファールを与えない。安易にゴールラインに逃げない。

簡単なようで実は非常に難しいミッションも、名古屋相手には課せられることになるのです。

 

まぁ総じてこのゲームは、シャビエル対策がハマりつつあり、水戸が狙いを出せたゲームでもありました。

それを示唆するのが、プレーエリアです。

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これが水戸の90分を通じてのアタッキングサイドですが、シャビエルがいない右サイドからの攻撃が多いことが証明されています。

自分たちの攻撃を右サイドを中心に行うことで、結果的にシャビエルが関与する時間は減っていきます。

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実際にこの試合の名古屋のアタッキングサイドは、シャビエルがいない左サイドでのプレーが増えていました。

こうした形で、チームとしてシャビエルをゲームに入らせないような工夫もされていました。

 

【第32節vs大分(H)】

 大分の布陣は、前節の水戸と同じフラットな442でした。

この試合の前の天皇杯で試したらしく、明らかに名古屋を意識したものだと思われます。

対する名古屋の布陣は前節同様3421で、シャビエルは右のシャドーポジション。ボランチ田口泰士が復帰したことと、シャドーの相方として玉田圭司がスタメンに入ったことが意味をなしてきます。

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普段は3バックが多い大分があえて442にしてきた、ということは、シャビエル対策すなわち名古屋に対する守備の戦術も水戸と似通ってくることは想像に難くないと思います。

 

サイドハーフインサイドアウトを基本動作とし、常にシャビエルに対して近い位置でアプローチができるようにポジションをとっています。

また、マークの受け渡しと、それに伴うカバーリングの動きも洗練されています。

 

この動画では、左サイドハーフに入った7番の松本怜に注目してください。

ボールとは逆サイドにいるシャビエルに対して、常に目を離さず、いつでもアプローチができる距離感を保っています。

相当な警戒を感じますね。

 

しかし、同じような対策をされて、二度も黙っていないのがガブリエル・シャビエルです。この大分戦では、前節の水戸戦ではあまりみられなかった動きを随所に入れていきます。

まずは、シャビエルをハーフスペースでのレシーバーとして使うパターンを入れます。つまりチャンスメイクを他の選手に任せて、決定的なエリアでの仕事に専念させるということです。

これは、田口泰士の復帰によって可能になったオプションです。

また、シャドーとしてコンビを組んだ玉田圭司も、狭いスペースでのボール扱いに長けた選手です。

彼とのコンビネーションで、ゾーン外から中に侵入するオプションも見せました。

ただ、大分も最大限の警戒をしているので、バイタルエリアに侵入したシャビエルに対しては、4人がアプローチに行っています。

こうした形で、自分と相性のいい選手とのコンビネーションを使って、大分が守ろうとしているハーフスペースに入っていこうとするプレーが非常に多くみられました。

 

また、エリア外でボールを持たされた際には、早めのサイドチェンジを行なって、そこにランニングして絡んでいくことで、相手のディフェンスを混乱させるパターンも見せています。

 

あと2つほど、シャビエルが他の選手とのコンビネーションで侵入していき、決定的な仕事を仕掛けるシーンを紹介しておきます。

2つ目の動画のように、少しでもシャビエルを自由にしてしまうと、金縛りにあったかのように守備側は後手後手を踏ませられてしまいます。

それほどの圧倒的なクイックネス、そしてトップスピードに乗りながら繰り出すことができる技術が彼には備わっているということです。

 

また、視野の広さも披露します。

 

明らかに水戸戦に比べて、相対的なパフォーマンスが上がっているのがみて取れると思います。それは、玉田や田口の存在を始めとする、自分のプレーを理解してくれているチームメイトの存在あってのことだと思います。

しかしさすがは大分。シャビエルに最後の部分では仕事をさせません。

最初にあげた基本戦術を遂行しながら、じっと耐えてその時を待ちました。

このゲームのことを話すと、名古屋はシモビッチが二度ほど決定機を迎えたのですが、どちらも決め切ることができませんでした。

シャビエルに全員の意識がどうしても強く向くので、意外とシモビッチはボールを深い位置で受けることができているのです。

秋山や和泉などの、WBの斜めの侵入も効果的でしたが、ネットを揺らすまでは至りませんでした。

 

無敵そうに見えるシャビエルにも、そこまで得意じゃないかもなと思えるプレーがあります。それが、1on1で相手を抜き去るドリブルです。

十分なボールタッチでリズムを作って、タイミングで相手の重心をずらすドリブル、時間を作るドリブル、シュートコースを作るためのフェイントを得意とするため、縦にガンガン抜き去るようなスタイルのドリブルはあまり出してこないのが特徴です。

これからシャビエルと対峙するチームのDFは、中を切って縦に持ち運ばせる対応がベターなのではないかと思います。

ただ、それでも決定的な仕事に繋げられるのがシャビエルです。

先ほどの田口へのパスしかり、こちらのセンタリングしかり。

 

また、シャビエルは、読みの良さでボール奪取を効率的に成功させることにも長けています。前節の水戸戦、そしてこの大分戦でも彼のアプローチやインターセプトからショートカウンターを仕掛け、決定機を作ることができています。

 

今後の対戦チームは、自分たちの攻撃時に前残りしているシャビエルにも十分に気をつけておくべきだと思います。

 

このゲームは、結果的に後半終了間際にCKで大分が先制し、そのままフルタイム。大分が0-1で勝利しています。

シャビエル自身は、ゴールやアシストといった結果は出せませんでしたが、水戸戦に比べて多くのチャンスに絡んだり、チャンスをクリエイトできていました。(実際に数値でも高い結果が出ていました。)

プレーエリアとしても、前節と比べれば一目瞭然ですが、名古屋の右サイド(シャビエルサイド)での攻撃割合が高かったと出ています。

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中央を割らせず、最後まで耐え切った大分を褒めるべきゲームだったと思います。

 

 

【第32節vs金沢(A)】

さて、筆者も観戦に訪れた連休、台風を待つ金沢で行われたアウェイゲームです。

この前の2試合で、基本的なシャビエル対策は見えてきました。

ということで、なんとなく予想できたかもしれませんが、金沢も布陣はフラットな442を敷いてきました。

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対する名古屋は過去2試合と同様に3421。シャビエルは同じく右のシャドーに入りました。

金沢は過去の2チームと同様に、自陣でゾーンをコンパクトに敷いて、インサイドアウトの動きからシャビエルをハーフスペースから追いやる方向なのかなと予想していたのですが、蓋を開けてみたら、やはりそこには柳下正明がいたのです。

 

この二つの動画をみていただければ分かるかと思います。

金沢の特徴としては、1stディフェンスの開始エリアが非常に高いということと、左右のCBがボールを持ったところを守備の開始時期と設定しているので、金沢の多くの選手が前に、そしてボールサイドにポジションを取ります。

そのため、逆サイドのサイドハーフの選手は最終ラインまで落ちて、全体をボールサイドにスライドし、斜めのゾーンを形成します。

これによって、名古屋のサイドチェンジを防ぐとともに、高い位置でボール奪取してそのままフィニッシュに持ち込むことが可能になります。

シャビエルのプレーエリアを、サイドだけでなく、自陣に限定させようとする狙いです。

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ですので、金沢はゾーンというよりは、マンツーマンの色合いが濃かったです。それだけにボールを動かすよりも、相手より強く速く多く動けるファイタータイプの選手を揃えてきました。

DAZNの試合前インタビューで柳下監督が名古屋の印象について語った第一声が

「人の出し入れが多い」だったんですよね。なるほどなー、人の出し入れでゾーンを混沌とされて後手を踏むくらいなら、人に人を付けたらええやんっていうことだったのかと…あのインタビューがずっと頭に引っかかってたんですよね。

 

 

そして、自陣に押し込まれた際には、その戦術が色濃く出ることになります。

 

先ほど上で説明したフォーメーション図をそのまま自陣に持ってくるようなイメージです。

シャビエルに対してゾーンで対応するデメリットとして、人が付ききれないちょっとした隙間でボールをもたれる可能性があることです。

彼は少しの時間とスペースがあれば、決定的な仕事ができる選手。ならば、うちは常に人をつけとけ!!ということです。

これなんかはそれが色濃く出てますね。ハーフスペース?そんなの知らん。人に人が付いてればスペースなんて関係ないわ!(小並感)

 

ただこの金沢のやり方は、全員が同じ絵を頭で描き続けないと、ボロが出ます。1人は人に着くけど、それに呼応できずに使われたくないスペースを意識する人が出てきてしまうと、全体が大きくずれていきます。

名古屋、シャビエルはそうしたズレによるスペースは見逃してくれません。

ボールホルダーを自由にして、バイタルエリアに侵入されてしまっており、その後の対応が後手後手になってしまっています。

こうした危険なエリアを活用できるのがシャビエルです。

 

また、人が付くことでシャビエルに対応しようとする金沢ですが、やはり個人能力の差は局面局面で如実に出てしまいます。

 

 

金沢は常にこうしたリスクと向かい合った上で、対人で殴り合うことを選んだわけです。人がしっかり付けている状態でシャビエルにやられるのは仕方ない。じゃあその分彼をゴールから遠ざけようという考え方ですね。

 

実際に、自分たちにとって最も危険なエリアで彼をフリーにすると、失点に直結するような、本当に危険なプレーをされます。

 

金沢は、水戸と大分と同じ442という基本布陣でありながらも、守備におけるコンセプトは180度くらい異なっていました。

その中でシャビエルをどう抑えるかという部分についても、共通する対応と、違う対応が見えてきて、フットボールは奥が深いと考えさせられた次第です。

 

ちなみに金沢戦は、マンツーで対応してくる金沢の目先を変えるという意味合いもあってか、シャビエルは結構左サイドでプレーする時間も長かったですね。彼なりに打開してやろうという意思が現れていたのかもしれません。

 

金沢戦の最後に、、

自分たちが攻めている時の、前残りシャビエルが個人的には最も危ないんじゃないかと思っています…

 

【第34節vs東京V(H)】

最後の分析になります。ヴェルディとの第1戦はこのブログでも取り上げたことがあるように、名古屋の守備面での不安定さを効果的な戦術で突いてきました。

さて、あの時にはまだ名古屋に所属していなかったシャビエルに対して、ヴェルディ首脳陣はどういう準備をしてきたのかな?と注目していました。

 

蓋を開けてみると、ヴェルディは過去3チームと同じ4バックを踏襲しながらも、4141というシステムで、アンカーをライン間に配置する形でした。

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対する名古屋も、これまでリーグ戦で採用してきた3421から一変し、フラットな442でこの試合に挑みます。

ウィークデイに行われた天皇杯セレッソ戦でも試していました。

下のフォーメーション図では右サイドにいますが、始まってみるとシャビエルは左サイドハーフに入っていました。

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 まず、4141にしてきたヴェルディの狙いです。

基本的には1トップのドウグラスが縦のパスコースを遮断して、ボールをサイドに誘導し、そこにウイングとインサイドハーフとSBが呼応してプレッシングしていくやり方です。

名古屋はそのヴェルディの1st守備からのプレッシング回避のため、しばしば動画のように小林が最終ラインまで落ちてビルドアップをサポートします。

それに対してはインサイドハーフがFWの位置まで上がってアプローチしていく方法を取っています。

そしてその背後をシャビエルに使われないように、SBとアンカーで見るというのが、基本的な敵陣におけるヴェルディの守備戦術です。

 

自陣では、完全に全員が素早く帰陣して4141のコンパクトな陣形を確保して、ハーフスペースを消していきます。

イメージとしては、水戸や大分が仕掛けてきたものと同じです。

違う点はアンカーを置いているところ。1st守備とカウンター要員を1人減らし、そこはインサイドハーフの上下動でカバー。それよりも、シャビエルが最も脅威を発揮するハーフスペースをしっかり蓋をするという意図で入ってきました。

 

ただ、結果的にこの守備戦術はうまくいったかいかなかったか、微妙なところでした。

名古屋の442のポゼッションがそれを上回るシーンが多く見られたからです。

 

まずはこれ。いわゆる三角形を随所に配置して、少しずつヴェルディのゾーンを動かしながら、斜めにシャビエルが入っていきます。

このシャビエルの斜めの動きは冒頭から特徴の一つとして言及してきましたが、そのリズムに完全に合うパスをワンタッチで出せる田口の存在も見逃せません。

こういうボールの動かし方をされてしまうと、ゾーンはただのコーンに成り下がってしまいます。

金沢の柳下監督は、これが怖くてマンツーマン気味の守備をしたのだと思われます。

 

また、この試合の大きなポイントは、28番の存在だったように思います。

 

名古屋が3421から442に変えた理由としては、攻守におけるシャビエルの負担軽減にあると私は考えています。

普段であれば、シャビエルが一人で担うゲームメイクの仕事を玉田が行うことによって、相手のマークが分散されます。

シモビッチもポストプレー、ボールを敵陣で引き出して受ける動きに磨きがかかりつつありますが、玉田はより広範囲に動いてボールを引き出してさばいて、リズムを作ることができる選手です。

玉田の存在は、シャビエルにとっても大きなものだっただろうと推測されます。

 

動画のシーンでは、玉田によってボールを動かし、右サイドの青木が左インサイドハーフの選手がボールホルダーにアプローチをかけ、ポジションを空けたことによって生じたハーフスペースでボールを受け、シンプルに宮原とのパス交換でペナルティエリアの外側への侵入に成功しています。

このように、ヴェルディの4141は互いの相互補完が不十分なシーンが局面局面で見られました。

このプレーによって得たCKをシャビエルが蹴り、それをニアでワシントンが合わせて名古屋が先制します。この日はもう1本同じような流れで得点を決めています。(CKで2アシスト)

何度も指摘しているように、place-kickは対策のしようがありません。

いかにこういう場面にならないように防いでいくか、危険な位置でファールを与えないかが鍵になります。

 

対するヴェルディも、シャビエル対策として、前残りするシャビエルの裏を有効活用する戦術を実装していました。

 

 

実際に2つ目の動画は、この日唯一のヴェルディの得点にも繋がっています。

この前残りするシャビエルについては、名古屋の攻撃においても特徴になっているため、賛否両論分かれるところだと思いますが

個人的には圧倒的に攻撃面での収支が得られているので、これはこれで戦術としておいておいてもいいと思っています。

また、この日の名古屋は442の布陣にしたことで、シャビエルの背後のスペースを全体でスライドしてカバーリングし、守りきった後シャビエルを使ったカウンターという応用も効かすことができていました。

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この日の名古屋は動きが早く、この後、選手交代によってシャビエルをFWにポジション変更させます。

 

シャビエルと自分たちがどのような対策をされて、どの部分を攻撃されてくるかを次第に選手たちが理解してきたように思います。

その裏返しとして、ヴェルディ戦ではシャビエルが絡まなくとも、攻撃におけるチャンスシーンを何度か作ることもできていましたし、シャビエルを効率的に活用してフィニッシュに持ち込み、得点も奪えました。

ヴェルディは、用意してきた4141がうまくはまらないままCKで2失点してしまい、リズムを失ったまま最後までゲームが進んでしまったという感じでしょうか。

その中で、名古屋が次第に自分たちの立ち位置を理解し始めて、実際にプレーとしても現れ始めたという90分でした。

 

【個人スコア】

 ここで、「Football LAB」で公開されている個人スコアもご紹介させていただきます。

日付 試合結果 出場時間 Pos. G A   シュート 攻撃 パス ドリブル クロス 守備
24 7/22 京都 31 名古屋 90 OH 1 0   3.35 2.53 2.15 0.39 0 0.26
25 7/30 熊本 01 名古屋 ←OUT 76 OH 0 0   -0.28 1.75 0.99 0.50 0.26 0.91
26 8/6 名古屋 74 愛媛 90 OH 0 2   0 3.62 2.77 0.23 0.62 0.52
27 8/12 名古屋 52 松本 ←OUT 89 OH 1 2   1.21 3.62 3.62 0 0 0.71
28 8/16 町田 34 名古屋 90 OH 1 3   -0.28 1.31 1.15 0.05 0.11 1.62
29 8/20 名古屋 31 福岡 90 OH 0 0   -0.15 5.71 4.33 0.21 1.17 0.11
30 8/26 名古屋 23 横浜FC 90 OH 0 0 イエロー x 1 0 2.82 1.43 0.21 1.18 1.10
31 9/2 水戸 11 名古屋 90 OH 0 1   -0.51 2.07 2.07 0 0 0.75
32 9/9 名古屋 01 大分 90 OH 0 0   -0.66 7.17 4.76 0.72 1.69 0.35
33 9/17 金沢 31 名古屋 90 OH 0 0 イエロー x 1 -0.56 2.86 2.53 0.32 0 0.90
34 9/24 名古屋 41 東京V ←OUT 89 LSH 0 3   -0.48 2.88 2.79 0.09 0 0.80

 

やはり全体的なスコアの印象として、攻撃CBP、パスCBP、ドリブルCBP、クロスCBPいずれも、負けてしまった大分戦が一番高い結果が出ています。

時点で東京V戦⇨金沢戦⇨水戸戦となっています。ここまで解説してきたシャビエル対策と、それに対するシャビエルのパフォーマンスが客観的にも出ているのではないでしょうか。

www.football-lab.jp

また、これはあるブロガーさんがまとめたデータです

 

攻撃CBP/90分 : 2位
  ドリブルCBP/90分 : 62位
  パスCBP/90分 : 5位
  クロスCBP/90分 : 22位
  シュートCBP/90分 : 73位
  ラストパス/90分 : 3位

→ 夏に名古屋に加入したMFガブリエル・シャビエルは11試合で3ゴール11アシスト。異次元の活躍を続けている。J2の中では規格外の選手と言えるが「攻撃CBP/90分」は2位、「パスCBP/90分」が5位、「ラストパス/90分」が3位。3部門で上位に位置する。左足のキックの精度は高くてプレイスキッカーとしても優秀である。一方で「ドリブルCBP/90分」は62位、「シュートCBP/90分」は73位。そこまで高くない。

とあります。

これまでの検証で見えてきたように、ドリブルでのチャンスメイクやシュート数(枠内シュート数やゴール数)自体はそこまで特徴的ではありません。あくまでもチャンスメイカーです。

llabtooflatot.blog102.fc2.com

 

【まとめ】

 

駆け足で4試合をまとめたので、少しわかりにくい部分もあったかもしれませんが、この4チームがシャビエルに対して対策してきた方法を見てきました。

結論としては、「個人に対する対策方法はあんまり見当たらない」っていうなんとも言い難いものと私の中ではなりました。それくらい個の能力は圧倒的です。

ただ、シャビエル個人ではなく、彼を含めた名古屋の組織に対して攻守ともに攻撃を仕掛けていけることはご理解いただけたのでは無いかと思います。

そのために、541で下手引かずに、2トップにして常にカウンターを狙ったり、プレッシングの強度を上げたり、シャビエルではなく、名古屋に勝つために積極的な采配をしていました。

彼を危険なエリアで仕事をさせないために、シャビエル個人だけでなく、名古屋全体に対する対策を敷いてきていることから、相手チームのスカウティングは、「シャビエルを抑えれば名古屋の攻撃は半減する」という仮説を立てているのかもしれません。実際に圧倒的な結果でもってそれを示しているわけですし。

シャビエルの技術力、クイックネス、キック精度はJ1でも上位レベルだと私は思っています。どうせやられるなら、ゴールからなるべく遠ざけよう、ゴールから遠い位置でやられようぜ!とするのは当然です。

今後対戦するチームも、同じような対策をとってくることは想像に難くないです。

大分と金沢の中間くらいのイメージがいいんじゃないかと個人的には思います。

 

逆に名古屋目線で言えば、ガブリエル・シャビエルはそれだけの価値のある選手であることを、ほんの短期間で示したということです。

彼はまさに、現在の風間グランパスを象徴する選手です。

名古屋グランパスとして、今後の課題を挙げるとするならば、

彼がいないところでどれだけの決定機を作れるか。そしてそのチャンスを決めきれるか。彼をどうチームとして活かしていくか。

ヴェルディ戦で少し垣間見えた上記の点を、残り数試合の中でどこまで出せていけるかが、昇格の鍵となるはずです。